A LONG VACATION

ラジオのFM放送が、ティーンエイジャー達の一番の音楽情報をえるメディアだった1980年代初期、夕方オンエアされるフォーク、ニューミュージックのリクエスト番組から『雨のウェンズディ』が流れてきました。それは、当時流行っていた歌謡曲やフォークとは、全く異質な今まで聞いたことがない、とても洗練されたアレンジと、覚えやすいメロディー、そして夏の夕方の海辺でフォルクス・ワーゲンに佇む、若い2人の男女が、頭のなかでイメージされる、とても抒情的な歌詞と楽曲のクオリティーが極めて高いポップス・ナンバーでした。

 2013年12月30日に65歳の若さで惜しくもこの世を去った、大瀧詠一さんの大出世作にして代表作は、コンサート形式をとっていて、一曲目の『君は天然色』から最後のアンコール曲の『さらばシベリア鉄道』までの全10曲中、Pap-Pi-Doo-Bi-Doo-Ba物語(ストーリー)を除いて、松本隆、大瀧詠一の80年代音楽チャートのヒット・メーカーが作詞、作曲をそれぞれ担当しています。伝説のバンド「はっぴいえんど」解散後に、初めて一緒に仕事をした記念碑的作品です。

 アルバムのレコーディング中に、松本隆さんの妹が亡くなり、松本さんが詞を書けなくなる、というアクシデントを乗り越えて書かれた詞は、ポップス界最高の作詞家松本隆さん特有の風景の中に上手く登場人物の心情を描く、という特徴がよく出ています。また、ポップス界一の勉強家、大瀧さんのサウンドも、一見単純なようで、よく聞くと三重、四重に仕掛けが施されて、何度聞いても新しい発見があります。

 このアルバムのヒットがなければ、山下達郎さんや佐野元春さんも、今のような存在ではなかったでしょう。「日本のロック・アルバム・ベスト100(1980年代編)」(レコード・コレクターズ実施)で第一位を獲得した、次世代のポップス・ファンにもぜひ聞いていただきたいアルバムです。